以前ご紹介をした記事、
男性編【服装についての疑問に答えます】オペラ鑑賞時に押さえておきたい6つのポイント ここで紹介したポイントは以下の6つ。
- 王道はやはりダークスーツ
- ネクタイは状況に応じて(実は意外に難しい)
- タキシード(ブラック・タイ)も時には必要
- 色々バリエーションが効くジャケット・コーディネート
- 手ぶらがスマート
- スカーフ、ストールを使ってオシャレ度アップ
オペラ鑑賞にふさわしい服装はどんなものを選べばよいか、どちらかと言えば概念的な内容でした。
というわけで、今回は海外はもとより国内でも使える、オペラ鑑賞で失敗しないコーディネート(男性編)を3つ選んでお届けしたいと思います。
事前にお断りしておくと、様々な劇場・コンサートホールで鑑賞した経験を持つ私ですが、今回ご紹介するのはいずれもオーソドックスなコーディネート。
カジュアルな装いが一般的になりつつあるオペラ鑑賞のシーンでの(カジュアルな)コーディネートに関しては触れていません。(カジュアルの基準については、どんな場所で聴くか・観るかによっても変わるので、【服装についての疑問に答えます】日本国内のクラシックコンサートを聴きに行く!そんなとき服装3つのポイント も参考にしてみてください)
個人的な印象としては、特にイギリスやイタリア、フランスの歌劇場で見かける男性はオシャレ度のレベルが高い、と感じますね。それはスーツの歴史がイギリスから始まり、イタリア、フランスへの波及していったので当たり前といえば当たり前なのですが、スーツの歴史としては後進国である日本でもそういった国から輸入された素材やスタイルのスーツは手に入れることができるものの、TPOに合わせたコーディネートを身につける習慣がそう多くは無いので、いざ海外で着る!となると不安を覚えるのかもしれません。
前置きが長くなりましたが、今回取り上げるコーディネートは私達日本人にも合うコーディネートを選んだつもりです。それは肌の色がやはり欧米の男性とは違いますし、服装の歴史も西洋のそれとは違うからです。また、ファッションには流行というものがついて回りますから、網羅的な内容ではないことも予めご理解いただけたらと思います。
今は参考になる本やサイトも様々ありますので、色々と比較しながら一番合ったものを選ぶことをおすすめします。(ここからのお話もいくつかの書籍やサイトを参考にしています)
私がこれまで訪れた主な劇場・コンサートホール
ミラノ・スカラ座
パリ・オペラ座
ロイヤル・オペラハウス(ロンドン)
ウィーン国立歌劇場
ウィーン楽友協会
ザルツブルク祝祭劇場
バイロイト祝祭劇場
バイエルン国立歌劇場(ミュンヘン)
ベルリン国立歌劇場
ドレスデン国立歌劇場(ゼンパー・オパー)
フェニーチェ歌劇場(ヴェネツィア) など その他はこちらで紹介
その他、基本として押さえておきたいスーツ、シャツ選びのポイントも最後にご紹介します。
ダークネイビーを基本にしたコーディネート
- スーツ:ダークネイビーのストライプあるいは無地(スリーピースがおすすめだが、ツーピースもOK)
- シャツ:ブルー系または白のシャツ(セミワイドカラー)
- ネクタイ:ネイビー地に白のドット(水玉)柄、小紋柄など
- 靴:ブラウン系のストレートチップ、またはプレーントゥ
これは、オペラ鑑賞に限らず、レストランでの食事やビジネスシーンなど幅広く対応できる万能コーディネートといえます。手持ちのアイテムで充分揃えられるかもしれません。
ネイビーという色はとても奥が深い色なのですが、写真のような明るい色調のものから濃いめものまで様々。無地でしかも光沢感が少しあるとぐっとフォーマル度がアップしますので、オペラ鑑賞でもとてもよく見かけます。ただ、質感や素材が値段に反映しやすい、という側面も持ち合わせているので、どちらかといえば上級者向け。なので、1cmから1.5cm幅のストライプが入ったネイビーのスーツのほうが、同じ値段でもシャツやネクタイと合わせればそれなりに見える、のでコスパも良いといえます。
シャツはブルー系(薄め)または白で、ストライプなどの柄がガチャガチャ入っていないものをおすすめします。襟はセミワイドカラー(襟の開きが90度)がベストです。ボタンダウンシャツはカジュアルに分類されるので選ばないように。以前、ノーネクタイもありというお話もしましたが、スタンダードのコーディネートではありませんので、ここでは割愛します。
ネクタイは写真のようなドット(水玉)柄や小紋柄がもっともクラシックであるため、オペラ鑑賞にもふさわしいといえます。もっとも格式が高いのは無地ですが、これもスーツのときと同じく難易度は高めです。なお、レジメンタル柄(斜めのストライプ柄)やチェック柄などは幅広いデザインもありますが、これらは少しカジュアルになるので確実にオーソドックスなコーディネートとして押さえておきたいのであればドット柄または小紋柄を揃えておくと良いでしょう。
靴はブラウン系がおすすめです。もちろんブラックでも構いませんが、個人的にはネイビーにはブラウン系のほうがオシャレだなと感じます。ストレートチップ、プレーントゥとは「紐靴(ドレスシューズ)」のデザインのこと。ストレートチップは靴の先端に切替のデザインが施されたもの。プレーントゥは靴の先端に飾りのないシンプルなデザインです。ストレートチップがよりフォーマル度が高くなります。
イギリスやイタリアに限らず、ヨーロッパでは靴の専門店を多く見かけます。旅先でふらりと入るには、私もちょっと緊張しますがきちんと挨拶して入ればきっと快く迎えてくれると思います。言うまでもありませんが、商品には勝手にベタベタ手を触れないこと。とても嫌がられます。指で商品をさして試着するようにしましょう。
ダークグレーまたはチャコールグレーを基本にしたコーディネート
- スーツ:ダークグレー、チャコールグレー無地あるいはストライプ(スリーピースがおすすめだが、ツーピースもOK)
- シャツ:ブルーまたは白のシャツ(セミワイドカラー)
- ネクタイ:ネイビー地またはブラウン地のドット(水玉)柄、小紋柄、チェック柄など
- 靴:ブラックのストレートチップ、またはプレーントゥ
ネイビーと並び合わせやすい(扱いやすい)色がグレーです。落ち着きのある知性を感じさせる色としても知られています。グレーの色調も幅が広いですが、オペラ鑑賞にはダークグレーあるいはチャコールグレーの無地をおすすめします。前述のとおりネイビーの無地は質感や素材が値段に反映しやすい、と書きましたが、グレーはそこまで神経質にならなくても使いやすい色であるのと、日常的なビジネスシーンでもグレーは大変重宝しますから、ネイビーと合わせて揃えておくと良いと思います。こちらも無地だけでなく、1cmから1.5cm幅のストライプが入ったものでも合わせやすいと思います。
上のグレーは、ダークグレーやチャコールグレーよりも少し明るい、ミディアムグレーのスーツ。季節によってはグレーでもミディアムからライトグレーといった薄い色調のものを選べますが、ネクタイやポケットチーフなど工夫して、いかにもビジネススーツ風にならないように。
ちなみに、ヨーロッパの劇場ではグレーよりネイビーの着用率が若干多い印象ですが、問題ありません。グレーとネイビーを押さえておけば、まず浮くことはないと思います。
イタリアなど暖かい気候の国の劇場に行くと、ライトグレーのスーツをオシャレに着こなしている紳士をよく見かけます。日本人は肌の色合いから濃いめのグレーが似合うと言われますが、日本人でも白髪の多い人やブラウン系に染めているなどの場合には似合うと思います。
シャツはネイビーのときと同様。白またはブルー系がフォーマルです。チェック柄やストライプ柄を選んでも構いませんが、あまり目立たない物が良いと思います。基本的に無地(柄が入っても目立たない)を着る男性が多いです。また濃いブルーや薄いピンク地などのシャツもグレーには合いますしネクタイ次第ではとてもオシャレですが、フォーマルではなく、カジュアルの部類に入るので注意が必要です。
ネクタイは、スーツがグレーなのでブラウン系のネクタイも合わせられます。写真のようなグレーないしはシルバーも渋い印象で素敵。もちろん、ネイビー地も合います。
靴に関しては、ブラウン系も合わせられますが、オーソドックスなのはブラックです。こちらもストレートチップ、プレーントゥを選びます。
グレー系のツィードを基本にしたコーディネート
- ジャケット:グレー系ツィード(スリーピースがおすすめ)
- パンツ:ジャケットと同生地またはダークグレー・チャコールグレー無地(ウール素材)
- シャツ:ブルーまたは白のシャツ(セミワイドカラー)、スマートカジュアルであれば、ネクタイに合わせて同系色の細いストライプやチェック柄もおしゃれ
- ネクタイ:ネイビー、ブラウン系のドット柄やレジメンタル(斜めストライプ柄)といった正統派タイプから、ワインレッド・グリーン系が含まれた色味などもバリエーション好みに応じて。
- 靴:ブラックまたはブラウン系のプレーントゥ、ウィングチップなど。スウェード地でもおしゃれ
3つ目は先の2つと比較するとややカジュアルなコーディネートです。
クラシカルで上品なツイードジャケットは、セットアップスタイル(トップスとボトムスが揃いになっている服のこと)や、英国紳士を彷彿とさせるスリーピーススーツスタイルがよく似合います。実際に、イギリスやフランス、イタリアの劇場ではツィード地のジャケットとパンツでオシャレに着こなす男性を多く見かけます。
ツィードは秋冬シーズン、まさにオペラのハイシーズン(10月〜4月)に大活躍。スーツより暖かいし、春先ならコート無しでも着れてしまいます。
ジャケットの柄は、上の写真のようなチェック柄またはヘリンボーン柄(魚の骨のような柄)が一般的で、いずれも柄の大きさが大きくなればなるほどカジュアルに、小さくなればなるほどフォーマルになります。下の写真はどちらかといえば大きめの柄なので、オペラ鑑賞であれば昼公演や、オペラより若干カジュアル傾向のあるオーケストラや室内楽などのコンサートのほうがふさわしいかもしれません、が、【服装についての疑問に答えます】オペラ鑑賞時に押さえておきたい3つのポイント でもお話したように、現代はカジュアルな服でも一般的なオペラ鑑賞において追い出されるようなことはまず無いので、このくらいの柄であればまったく問題ないと個人的には思います。
ジャケットに合わせるパンツはセットアップでも良いですし、写真のようにダークグレー、チャコールグレーの無地も合います。大きな柄でジャケットとパンツのセットアップとなるとかなり目を引きますが、着こなせるととてもオシャレなのでいろいろと試してみてはいかがでしょうか。
シャツは、先の2例と同じくブルーまたは白のシャツが基本ですが、ネクタイは写真のようなサーモンピンクのように遊び心でポケットチーフと合わせて、思い切ってパッと目を引く色を入れてみても意外にしっくり着れます。心配な方は先の2例と同じくネイビーやブラウン系のネクタイと合わせたほうが無難です。素材もシルクのほかウール素材も合いますし、ワインレッドやグリーン系が含まれたものもバリエーションが広がりオシャレが楽しめます。
ネクタイの柄についてちょっと触れておくと、下の写真の斜めのストライプ柄(レジメンタル柄ともいう)は柄もののなかでもカジュアルになります。フォーマル度の高いものから、無地→ドット柄・小紋柄→レジメンタル柄 と覚えておくと良いと思います。オペラ鑑賞では、多数派は無地あるいは細かい柄(ドット柄でも小紋柄でも)です。レジメンタル柄はビジネスシーンには馴染みますが、オペラ鑑賞のときに身につけるなら、いかにもビジネススーツです、という風にならないように、全体的なバランスをみて合わせることをおすすめします。
足元もブラック、ブラウン系であれば革靴。ストレートチップやプレーントゥに加えて、写真のようなウィングチップ(模様が羽のようになっている)もオシャレですし、スウェード地の靴も合います。
基本として押さえておきたいスーツ、シャツ選びのポイント
最後に、オペラ鑑賞シーンに限らず、基本となるスーツやシャツ選びのポイントだけ押さえておきましょう。どのアイテムも身体に合ったもの、を選ぶことが大切で、そのバランスが崩れるとせっかくのコーディネートも良さを活かしきれません。こうしたヒントは、ネットや本でも色々と情報は手に入れられますので、ぜひ調べてみてください。
- 日本では略礼装とされるブラックスーツ&白のネクタイは海外ではNG。
- スーツは背中にシワ入らないものを選ぶ。大きすぎると縦ジワが、小さすぎると横ジワが入る。
- スーツの襟からシャツの襟が見えるように。理想的な幅はおよそ1.5cm。
- 手をおろしたときに、上着の袖口から見えるシャツの袖口もおよそ1.0〜1.5cm。
- パンツにもシワが入らないように。センターラインが曲がっていると長過ぎる。足の甲に若干かかる程度が理想。
- 逆に靴下が見える、足首やふくらはぎの肌が見える、丈の短すぎるパンツは論外。
- 本来、シャツは肌にじかに着るもの。肌着が透けて見えるのは極力控える、あるいはベージュや肌色に近い色のものを選ぶ。(最近ではシームレスタイプの縫い目のない肌着も多く出回っているのでおすすめ)
男性編 「オペラ鑑賞で失敗しないコーディネート3選」、いかがでしたか?
こうしてみるとスーツって本当に奥が深いなと感じますが、基本を押さえておけば
意外に簡単だと感じていただけるのではと思います。
そして劇場の雰囲気をたっぷり味わってオペラを愉しんでいただけたら嬉しいですね。
【参考】