旅のヒント

海外旅行再開に向けて乗り越えなければならない3つのハードル(2022年1月版)

海外旅行再開に向けてクリアしなければならない3つのハードル

新型コロナウィルス感染拡大の影響ですっかり遠のいてしまった海外旅行。

海外旅行再開に向けて乗り越えなければならないハードルは幾つもあるが、重要と思われるものを3つピックアップしてみた。いわゆる添乗員つきパッケージツアーだけでなく、個人旅行向けのパッケージやフリープランなども概ねこの基準によって、旅行が実施されるか否かが判断される。

残念ながら、海外旅行再開を熱望する人達がもっとも知りたい「いつまで待てば海外に行けるようになるのか」「いつ、海外旅行が再開するのか」「予想される解禁時期」に対する明確な回答は私にはできない。それくらい難しい問題であるし、実際に海外旅行が解禁し再開したとしても、また日本あるいは訪問国いずれかで感染が拡大すれば、即座に行動を制限しなければならなくなることも想定しておかなければならず、再び海外旅行ができない状態に逆戻りすることも十分あり得るからだ。

3つのハードルとは

(1)外務省が発出する感染症危険情報・海外危険情報のレベルが1以下になること

(2)日本および訪問国(経由国含む)の入国に際しての制限・隔離期間が緩和すること

(3)航空便を含む列車等の利用交通機関が運行し、ホテルや観光施設が稼働していること

外務省が発出する感染症危険情報・海外危険情報のレベルが1以下になること

海外旅行再開にむけて最もわかりやすい基準

現在、一部の地域・国を除き、外務省が発出する感染症危険情報は、レベル3または2となっている。
このレベルが最低でも1まで下がる、または、それ以下(つまりレベル0の状態)になることが海外旅行再開の大前提となる。

感染症危険情報レベル (2022年1月7日現在)
【レベル3】ヨーロッパ全域、ロシア、カナダ、アメリカ合衆国、メキシコ、中南米全域、タイ、マレーシア、フィリピン、インド、ネパール、トル、エジプト、モロッコ、アラブ首長国連邦、ケニアなど

【レベル2】中国、韓国、香港、台湾、マカオ、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランドなど

★外務省海外安全情報
https://www.anzen.mofa.go.jp/riskmap/index.html
(注)この「感染症危険情報レベル」と「海外危険情報(★)」とはまったく別ものであるので注意が必要。

海外危険情報(★)は、紛争地域や政情の不安定な地域に発出されているケースが多い

例えば、アフガニスタンや感染症危険レベルは3であるが、海外安全情報のレベルは4。
シリアは感染症危険レベルは2であるが、海外安全情報のレベルは4。

こうした国は、例えば「感染症危険情報レベル」が1以下に下がったとしても、海外安全情報のレベルが2や3の場合には、旅行会社は募集型企画旅行(受注型企画旅行も)は原則として実施はできない、と定めている旅行会社が圧倒的に多い。

そもそも、募集型企画旅行と受注型企画旅行ってどういうもの?

募集型企画旅行というのはパンフレットやウェブサイト上で、旅程と旅行代金を掲載し一般向けに募集する旅行商品のことで、旅行商品を購入(申し込み)する際には「募集型企画旅行契約」を旅行会社と旅行者は締結する。商品は、必ずしも添乗員付きツアーとも限らず、1人から参加できる個人旅行向けのパッケージなどもある。

一方、受注型企画旅行というのは募集型企画旅行とは異なりパンフレットやウェブサイト上でプランと旅行代金を載せて一般募集をすることができない企画旅行のことをいい、特定の企業向けの視察旅行とか、修学旅行、個人旅行手配などでよくみられる。「受注型企画旅行契約」を旅行会社と旅行者(またはオーガナイザー)が締結する。

駐在員や仕事で行き来するのもダメなの?

以上のように、このレベル1以下なら海外旅行は再開・・・の基準はいわば「旅行会社」が商品として販売する「募集型企画旅行」または、特定の旅行者(またはオーガナイザー)からの依頼を受ける「受注型企画旅行」のいずれかの場合となり、海外渡航自体を制限するものではない。つまり、海外に拠点を置く駐在員が日本と行き来する場合や、技術職や仕事を理由で海外と行き来するのは旅行業法上における「手配旅行」の範疇になるとされるため、制限は特に無い。

手配旅行契約とは?
あくまでも顧客からの依頼に基づき所定の手数料を得て「旅行手配」を請け負うもの。「募集型企画旅行契約」「受注型企画旅行契約」と異なり航空券なら航空券代、ホテルならホテル代ごとに、それぞれの費用と手数料を明確に分けて旅行者と契約を結ぶもの。

かんたんにいえば「自己責任」が前提となる旅行手配であるので、手配から旅行が終わるまでに生じた様々なリスクは旅行者が負うことが前提となる。

旅行会社に依頼せず、自分で航空券やホテルを直接手配する場合なども、これに該当する

リスクの一例
(1)訪問国において旅行の数日前に急遽入国制限が発出された。旅行のキャンセルをしようとホテルに連絡を取ったところ手配済みの部屋は返金不可タイプの特別料金で手配していたため返金には応じることができない、ホテルから提示された選択肢とは、入国制限が緩和するまで(宿泊の)権利を延長するか、払い戻しを諦めるかの二択であった。

(2)日本出国時に搭乗予定の航空便が急遽欠航となり、代替便が2日後になるとの連絡があった。ところが、そうなると旅行の目的である2日目のイベントに参加ができないため、旅行自体の意味がなくなってしまう。やむなく訪問国のホテルをキャンセルしようとしたが、通常通りの取消料がかかると言われた。

募集型企画旅行契約や受注型企画旅行契約の場合
それに対して、募集型企画旅行契約や受注型企画旅行契約の場合、取消料規定はパンフレットや契約書面にかかれている規定に従う。(出発日の前日から起算して30日前から20%の取消料が発生・・・というもの)
さらに、一定の条件下において発生したリスクを旅行者にすべて負わせないようにする「旅行者の解除権」というものがあって、旅行者は取消料を払うことなく旅行契約解除することが認められている。
つまり、上記のような(1)や(2)といったリスクが発生した場合、旅行者は所定の取消料がかかる期間内であっても、取消料を払うことなく契約を解除することができる、ということになる。

日本および訪問国(経由国含む)の入国に際しての制限・隔離期間が緩和すること

訪問国の感染者数の推移、感染者に対する国の方針や対策、観光目的の入国条件などを慎重にみていく必要がある

まず、日本人が訪問国に入国できるかどうか?については以下を参考にして判断する

新型コロナウイルスに係る日本からの渡航者・日本人に対する各国・地域の入国制限措置、及び入国に際しての条件・行動制限措置

外務省海外安全ホームページ
https://www.anzen.mofa.go.jp/covid19/pdfhistory_world.html

  • 入国時のワクチン接種証明書、PCR検査陰性証明書の義務づけ(いずれか、または両方)
  • 入国時または入国後のPCR検査が必要(ワクチン接種証明書提示によって免除できる国もある)
  • 入国後の自主隔離が必要(ワクチン接種証明書提示によって免除できる国もある)などの措置が取られている、または、日本人を含む海外渡航者の入国は認めない、あるいは、ビザを取得するように要請する国もある。

渡航先国によっては、出国前に PCR 検査等を受け、検査証明書の発行を受けなければ、行動制限を受けたり、渡航できない国もある。

海外から帰国する際の隔離緩和も重要なポイント

日本から訪問国へ・・・だけでなく、訪問国から日本に帰国した際の「隔離制限」も重要なポイント。
現役世代なら10〜14日間自主隔離、という状況が続く以上、現実的に海外旅行に出かけようという計画など立てにくい。

感染症危険情報・海外危険情報のレベルはいったいいつ頃下がるのか?・・・これは、隔離緩和・入国制限の緩和が中長期的に継続すると予測されてはじめてその兆しが見えてくる

これに答えるのはとても難しい。

つまり、日本と相手国それぞれ制限緩和がされないと「行き来」が困難であるので、日本の感染者数が減っていても、相手国がそうでなければ感染症危険情報などのレベルは下がらない。同様に、相手国の感染者数が減っていても日本の感染者数が減らなければ同様のことがいえる。ワクチン接種、経口薬が普及し、本当に終息の兆しが見えてきて初めてレベル1以下に下がるのではないか、というのが私の見方だ。

航空便を含む列車等の利用交通機関が運行し、ホテルや観光施設が稼働していること

順調に運行するかどうか、は、相手国における感染状況によっても異なる。さらには外国人観光客に対する相手国の考え方によっても異なってくる。以下は、2022年1月現在、いくつかの国における措置であるが、大変流動的であるので訪問国ごとに細かく事前に十分調べておく必要がある。

  • 施設入場時、交通機関利用時におけるワクチン接種証明書やコロナ検査陰性証明書の義務づけ
  • 交通機関利用時やレストラン入場時など、入場入店時のマスク着用義務
  • 特定のアプリによるQRコードのスキャンやスクリーニングなどが入場・入店の条件

など

感染者拡大によって、ホテルやレストラン、商業・観光施設などは急遽閉鎖される可能性もある

募集型企画旅行や受注型企画旅行のいずれかでも、パンフレットや行程表でうたっている通りに施設やレストランがオープンしない場合があることを想定しておく必要がある。また、ホテルなどはロックダウンなど厳しい措置が取られると観光目的の利用客は断り、ビジネス目的の利用客にのみ絞るようなケースも過去に実際にあった。万が一、訪問国においてそういった事態になった場合、旅行の目的にも影響することを想定しておく必要がある。

影響が大きく円滑な旅行実施が困難だと判断した場合には、旅行会社は旅行の出発前であっても、募集型企画旅行であれ受注型企画旅行であれ、ツアーの催行を見合わせる(または旅行会社による解除権行使)ことができる。

まとめ

以上のように、まだまだ海外旅行再開までの道のりは険しいと言っても過言ではない。現役世代は往来に際しての「隔離期間」がネックになるし、リタイア組のように時間的にも制約が比較的少なく多少の隔離期間は問題ない、という人にとっても、コロナ前のように、順調に物事が運ぶかどうかはまた別物であることがご理解いただけたのではないかと思う。

そのため、本気で今すぐにも海外旅行がしたい場合には、手配旅行契約で手配を引き受けてくれるところを探すか、自力で航空券やホテルを手配して、入国時の情報なども集めて、一定の条件で日本からの観光客を受け入れてくれる国であれば、今からでも旅行は再開できる。
また、海外の場合、日本と比べて消費者に優しくない側面もあるので、リスクを補ってくれるような海外旅行保険に加入するなどして、リスクヘッジすることをおすすめする。(※)

(※)リスクを悲観的に捉えるのではなく、以前書いたアフターコロナの海外旅行の必需品となりうる「海外旅行保険」の話なども参考にしてもらい書いたのでよければ参照して欲しい。

アフターコロナの海外旅行の必需品
海外旅行保険はアフターコロナの海外旅行の必需品

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この感染症が完全に終息するまでは、まだ数年かかるとも言われている。ただ、リスクも楽しみのひとつだ、くらいに気持ちに余裕をもって旅ができるようなスタンスでいれたのなら、もうあと少しで海外旅行には出かけられるはずだし、それも含めて、旅を計画する楽しみと思ってみたら案外、海外旅行再開の扉はもう目前に来ていると思っていいと思う。

日本にとってはまだまだ遠い海外旅行ではあるけれども、ヨーロッパ内では既にこの1年間でヨーロッパ内の観光客の行き来は、ほぼ従来どおりに戻ったと言われており、アメリカなどからも観光客が戻ってきているという話なので、もはやヨーロッパではリスクと伴走しながら、いかに旅を楽しめるか?に関心が向いているようだ。そういった意味では、島国日本が国際社会に取り残されないかどうかも少し心配に感じてくる。

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