昨日は新国立劇場の《エレクトラ》千秋楽。
新国立劇場公式サイト
https://www.nntt.jac.go.jp/opera/elektra/
約1時間45分という凝縮された作品。ギリシャ悲劇の世界に浸りながら、
新制作ならではの演出が投げかける問いを考える時間も興味深い。
大編成オーケストラと歌手たちが織りなす緊張感あふれる響きは、
この作品ならではの魅力。
R.シュトラウスは、私が最も惹かれる作曲家の一人だ。
交響詩で開花した卓越した描写力は、
オペラでも遺憾なく発揮されている。生の演奏に触れるたび、
その音の世界にどこまでも引き込まれてしまう。
人間の心理や感情の揺れだけではない。登場人物同士の微妙な距離感や駆け引き、
さらには舞台を包む空気や静寂までも音で描き出してしまう。
廃墟を思わせる無機質な舞台空間でさえ、音楽によって命が吹き込まれていくように感じられた。
やはりR.シュトラウスは、音によって世界そのものを構築できる稀有な作曲家である。その魅力に、改めて引き込まれた。
印象的だったのは、主要女性キャスト3人のバランスの良さだ。
誰か一人が突出することなく、
それぞれの個性を保ちながら作品全体として見事に調和していた。
東京フィルも終始安定した演奏で、
それを支えた大野さんの統率力が光っていた。
千秋楽を聴けたことも大きかったのかもしれない。
公演を重ねるごとに完成度が高まっていったようで、
カーテンコールからも充実した空気が伝わってきた。
演出では、幼少期を道化師やブランコで象徴する手法は理解できたものの、
やや要素を盛り込みすぎた印象も受けた。
一方で、クリソテミスをエレクトラと並ぶ存在として描いた点は印象的である。
ヘドヴィグ・ハウゲルドのクリソテミスは、リリカルで情感豊かな歌声が魅力的で、
新国立劇場来シーズンの《サロメ》も楽しみになった。
藤村実穂子さんのクリテムネストラは、恐怖と苦悩を抱える母親像を深みのある歌唱と演技で表現した。
そして何より圧倒されたのはアイレ・アッソーニのエレクトラである。
ほぼ出ずっぱりという難役を最後まで歌い切り、終盤まで集中力と声の張りを失わなかった。
終幕では、エレクトラの恍惚、クリソテミスの叫び、
そして深い霧の中へ消えていくラストシーンが静かな余韻を残した。
新国立劇場も今シーズンは、このエレクトラで幕がおりる。
来シーズンは 10月からスタート。フィガロ、トスカ、そしてサロメを観ようかと考えている。
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初めての方へ 新しいライフステージに、オペラという楽しみを
2026/6/28

