海外出張の合間や観光ツアーのフリータイムなど、わずか「4時間」でも空き時間があれば、オペラ&コンサート鑑賞のチャンス。
そんなチャンスが来たら、ぜひ本場のオペラ&コンサートを体験してみるのはいかがでしょうか?
前編につづき、今回は後編をご紹介します。
準備しておきたい6つのこと
- 滞在先(ホテル)から会場までの交通手段を調べておこう → 前編
- 会場周辺の治安情勢をチェックしておこう → 前編
- どんな服装で鑑賞すればよい? 持っていくと便利なものはある? → 前編
- 食事のタイミングは? 鑑賞の前?それとも後?
- チケットはどうする、当日券?それとも前売券?
- オペラ&コンサート鑑賞の予習におすすめの方法とは?
初めての海外オペラ&コンサート鑑賞!その前に準備しておきたい6つのこと【前編】
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私がこれまで訪れた主な劇場・コンサートホール
ミラノ・スカラ座
パリ・オペラ座
ロイヤル・オペラハウス(ロンドン)
ウィーン国立歌劇場
ウィーン楽友協会
ザルツブルク祝祭劇場
バイロイト祝祭劇場
バイエルン国立歌劇場(ミュンヘン)
ベルリン国立歌劇場
ドレスデン国立歌劇場(ゼンパー・オパー)
フェニーチェ歌劇場(ヴェネツィア) など その他はこちらで紹介
食事のタイミングは? 鑑賞の前?それとも後?
オペラ、コンサートともに公演は夜に行われることが多いのですが、週末や平日の昼間に行われることも少なくありません。
昼間の公演であれば食事のタイミングはそれほど困ることはありませんが、夜の場合、食事を取るタイミングを逸してしまうと空腹のまま夜中まで…ということにもなりかねません。
最近では健康志向から1日1食あるいは2食の人もいますが、今回はあくまでも従来の1日3食の場合を想定してのお話。
出張や旅行で訪れる場合には、朝はホテルで朝食を取り、昼食はビジネスパートナーと一緒にランチ。観光があれば市内のレストランで取ることになります。
普段であれば19時くらいからは始まる夕食ですが、公演のある日はどうすればよいでしょう?
夜の公演は何時からスタートする?
コンサート
開演時間:19時~20時(平均)
終演時間:休憩を1回はさんで2時間前後。もちろん作品にもよるし、カーテンコールが長く続いたり、アンコールが加わるとさらに延長される。これは演奏家によってさまざまで、オーケストラだけのプログラムの場合にはアンコールはほとんど無い。一方で、ベートーヴェンの第九交響曲や、マーラーやブルックナーの交響曲となると楽章の間で切ることができないため休憩なしで演奏されるが、こうした場合は休憩が無い分時間も短くなります。
日本では来日演奏家に限らずピアニストやヴァイオリニストや歌手などのリサイタルやコンサートなどに出かけると、アンコールだけで30分近くに及ぶ場合もありますが、ヨーロッパでは2,3回のカーテンコールのあと、あっさり終わるケースのほうが多い印象です。
オペラ
開演時間:18時~20時(平均)
終演時間:オペラは作品によって、まちまち。
平均すると、幕と幕の間に休憩が入り2時間30分~3時間30分ぐらいが標準ですが、
コンサートと同様、休憩なし(一幕もの)のオペラもあります。
★R.シュトラウス《サロメ》約1時間45分
★プッチーニ《ジャンニ・スキッキ》約1時間
★ワーグナー 《ラインの黄金》2時間30分
逆に4~5幕もののオペラや、1幕あたりの時間が長いものになると5時間を超えるものも。そうなると、終演が深夜になってしまうので、16時や17時から開演する場合もあります。
★ワーグナー《マイスタージンガー》約6時間(休憩2回の場合)
★ワーグナー《パルジファル》約6時間(休憩2回の場合)
★ヴェルディ《ドン・カルロ(フランス語版)》約5時間(休憩2回の場合)
★R.シュトラウス《ばらの騎士》約4時間(休憩2回の場合)
劇場のサイトには開演時間と終演時間が載っている場合もありますが、無い場合がほとんどですので、およその終演時間の目安は自力で調べる必要があります。
「オペラの作品名 演奏時間」と検索すると、休憩を入れないで演奏した場合の演奏時間が出てきますので、
その時間に1,2回分の休憩時間(各々30分程度)を足した時間がだいたいの目安だと考えればよいでしょう。
では、夕食はいつ取るか?
オールデイダイニングでない限り、フランスやオーストリア、ドイツなどの一般的なレストランは夜の18時~19時からオープンし、ヨーロッパでも、より北に行けば早く始まり、逆に南に行けばより遅くスタートします。つまり、イタリアやスペインの場合などは19時~20時にオープンするお店が多いということになります。
終演時間後に入れるお店を探す
オペラが22時より前に終わるなら、北か南かの地域性もあるものの、まずラストオーダーには間に合います。また会場の近くは鑑賞後のお客様の来店を見込んでいるレストランもあるので22時を過ぎてもオープンしているところも少なくありませんが、できるだけ事前に予約をしておいたほうが無難です。
会場の近くにオールデイダイニングやカフェがある場合
開演前に軽く食べておき、あとは休憩時間中に会場内にあるホワイエ、カフェ、バーで軽くつまむ程度。空腹でどうしようもなくなることはまず無いですし、少食派の人や、終演後23時近くなって胃に食べ物を入れることに抵抗がある人におすすめ。鑑賞後は寝るためにホテルに戻るだけです。
終演後、ホテルに戻ってから食べる
ホテルのダイニングも22時30分ぐらいまでは空いているので、会場の近くのホテルに滞在している場合にはホテルに戻ってから食べるという手段もあります。(ラウンジやバーなら、深夜まで営業しているところも。この辺は日本とだいたい同じ)
会場内のホワイエ、カフェやバーではどんなものが食べられるのか
カナッペやサンドイッチといったコールドミールが主。会場によっては椅子が用意されていることもありますが、たいていは小さいバー・テーブルに器を置いて立って食べます。混雑状況によってはそこそこ並ぶのに待たされる場合もあるので、休憩時間にお手洗いなど済ませていると食べそこねてしまうことも。
レストランも充実!開演前・休憩時間に食事ができる劇場
ロイヤル・オペラハウス(ロンドン)
https://www.roh.org.uk/eat-and-drink
イギリスが世界に誇る歌劇場のひとつ。ロイヤル・オペラハウス内にはなんと7ヶ所もレストランやカフェ、バーがあります。休憩中にオープンしているレストランもありますが、予約は必須。またチケットの提示も必要。
メトロポリタン歌劇場(ニューヨーク)
https://www.metopera.org/visit/dining-at-the-met/
イギリス同様アメリカが世界に誇るメトロポリタン歌劇場にもレストランはあります。開演の2時間前には空いているので、ゆったり食事をした後でオペラ鑑賞を楽しむことができます。
チケットはどうする、当日券?それとも前売券?
前売券の買い方
事前に滞在予定も決まっており、確実にスケジュールを組むことができるなら、事前に前売券を買っておくほうがやはり安心です。
買い方はいろいろありますが、劇場のオフィシャルサイトからオンラインで購入する、チケットオフィス(エージェント)や旅行会社を通して購入するなどの方法があります。
オフィシャルサイトで購入した場合
チケットはEチケットが増えているものの、まだまだ一部では「ペーパー(紙)チケット」の文化もまだ残っており、決済後に発行される「引換証」をもって、会場敷地内あるいは会場近くにあるボックスオフィス(チケット売り場)でチケットに交換しないとなりません。こうしたボックスオフィスの多くは夕方にはクローズしてしまうので、事前に営業時間を調べておいて時間内に受け取りにいくか、あるいは、郵送するようにしたほうが良いでしょう。
現地のチケットオフィス(エージェント)・旅行会社
通常はチケットの券面に手数料が加わった金額で購入するケースが多いので、チケットもホテルのフロントに届けてくれたり、会場のシートマップやパンフレットなどを一緒につけてくれることもあります。最近のチケットオフィスにはオンライン予約を受けているところもあるので随分と便利になったと感じます。もう一つの方法は、航空券やホテルを依頼した旅行会社に頼む方法。音楽鑑賞ツアーを専門に扱っている旅行会社であればスタッフが直接手配する場合もありますが、通常はその旅行会社が使っている現地手配会社に委託する場合が多いです。そのぶん手数料は多くかかりますが、日本語でやりとりが出来るのと、確実にチケットを受け取ることができるのがメリットといえます。
当日券の買い方
当日券の購入方法は、各劇場サイトで事前に確認しておくことをおすすめします。また、完売公演の場合などは、当日券の販売を行っていない場合もあるため、サイトでは確認できないこともあります。そうした場合には、直接電話で確認するか現地のボックスオフィスに聞いて確認します。
販売されるのは公演のおよそ1時間ぐらい前からで、会場内のチケット売り場に買う人に列ができるのでそれほど迷わずに見つかりますが、前売券を引き換えるために並んでいる人もおり、列が分かれている場合もあるのでわからなければ人に訊いたほうが確実です。
ちなみに、ウィーン国立歌劇場の場合、開演の1時間前(夜公演)から販売がスタートしますが、これは通常の座席(着席)の場合。立ち見席は80分前から売り出され、着席の場合と売り場が違います。このように劇場によってシステムはさまざまです。
例外もある
なお、例外として、ウィーンフィルの定期公演のチケットのように、特定の年間会員向けに販売されるような特殊なチケットの場合は、前売券も当日券も出回りません。これらのチケットを探す場合には、チケットオフィス(エージェント)や、音楽鑑賞ツアーを専門に扱っている旅行会社などを通して手に入れる方法がありますが、ものによっては公演日の直前まで取れるかわからない場合も少なくありません。
ヨーロッパと日本を比較してみた。オペラ鑑賞チケットのお値段事情
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オペラ&コンサート鑑賞の予習におすすめの方法とは?
このテーマだけで独立したカテゴリーが作れてしまうほど「奥が深い」予習の世界。予習にはいろいろな方法がありますが、今回は忙しい毎日の合間にサラッと予習をしたい人向けにいくつかヒントになる方法をお伝えしたいと思います。
オペラ
1.登場人物とあらすじを把握する
どんな登場人物がいるのか、大まかにあらすじを把握しておきます。解説書?というと堅苦しいイメージがあるかもしれませんが、そんなことはありません。イラストつきのオペラ解説や、名作オペラを紹介した書籍などわかりやすく書かれたものはいろいろとあります。あらすじだけでなく、オペラを作曲した作曲家についても時代背景やかんたんな生涯を知っておくと良いと思います。これはWikipediaなどでネットで調べる程度でもまずは十分です。
2.DVDつきの書籍やYouTubeなどで実際の舞台映像を観る
1だけでも実際のオペラを楽しむことはできますが、もし余裕があればDVDつき(映像つき)の書籍か、YouTubeで実際の舞台映像を観ておくとよりイメージが湧きやすくなります。特にDVDつきの書籍は、1のあらすじや登場人物についても詳しく書かれているので、最初からこの2番目の方法を選んでも良いと思います。YouTubeの場合、中には違法アップロードと思われる動画もあるので信頼できるチャンネルのものをご覧ください。
参考書籍
名作オペラ50作を、イラストと登場人物の相関図をまじえて紹介するおすすめの一冊。鑑賞する直前10分あれば予習ができてしまうかも?!
オペラとは何か? どんな楽しみ方ができるのか? 様々な角度からわかりやすく解説。
魅惑のオペラシリーズ(小学館)
DVDとセットになった書籍。あらすじだけでなく、対訳もセットになっているのでじっくり勉強するのにもおすすめ。
オペラは、演出によって同じ作品でもかなり印象が変わってくるので、できることなら舞台つきの映像をかいつまんで観ておくだけでも実際の舞台と比較する楽しみが倍増します。
コンサート
1.コンサート・プログラムの作品をひととおり聴く
聴き方はオーソドックスにCDを購入しても良いですし、YouTubeや各種音楽ストリーミングサービスを利用しても良いと思います。
作品にたどり着くまでのコツとしては、例えば、
”W.A.Mozart Symphony No.40 in G minor, K.550 ”
という作品が公演プログラムに入っていた場合、ここには
作曲家 = モーツァルト(W.A.Mozart )
ジャンル = 交響曲(Symphony)
番号 = 第40番 (No.40)
調性 = ト短調(G minor)
作品番号 = 作品550 (K.550 )
これだけの情報が含まれています。ここから、CDや音楽ストリーミングサービスで検索する場合、「モーツアルト×第40番」と検索するだけでも出てきますが、これは40番という作品がモーツァルトの中では交響曲にしかないからです。例えばこれが第5番の場合、「モーツァルト×第5番」と検索すると、それが交響曲の第5番なのか、ピアノ協奏曲の第5番なのか、ヴァイオリン協奏曲の第5番なのかこれだけでは情報が足りないので、見つけ出すのはちょっと難しくなります。
同じように「モーツァルト×交響曲」では範囲が広すぎで第40番にたどり着くまで時間がかかります。
もっとも簡単なのは、作品番号です。これはとても便利で「モーツァルト×K.550 」と検索すればほぼ一発で出てきます。
2.クラシック音楽情報ポータルサイトで予習
作品ジャンルごとの関するトレンドや、海外の演奏情報、アーティストたちの情報などクラシック音楽情報のポータルサイトで予習をしておくのもおすすめです。
ぶらあぼONLINE
https://ebravo.jp
Webマガジン「ONTOMO」
https://ontomo-mag.com
参考書籍
作曲家・人と作品シリーズ(音楽の友社)
作曲家ごとの主要な作品に関して、じっくり学びたい方は以下のような書籍を読んで予習するのも良いでしょう。
まとめ
初めての海外オペラ&コンサート鑑賞!その前に準備しておきたい6つのこと【前編】と【後編】いかがでしたでしょうか?
これら6つのポイントはすべて必ず準備しないとダメ、ということでもありません。なくてもどうにかなるものです。1つでも2つでも試してみながら、これまでは「あ、コンサート(オペラ)やっているな〜」と思っても、なかなか踏み出しにくいと感じた経験があった方に、このお話が少しでも役に立てるのでしたら嬉しいです。