今回は実際に劇場でオペラを鑑賞するとなったとき、チケットを買う段階になって
悩むのが、どんな座席を選ぶのが良いの? ということ。
一般的に、座席のカテゴリーというのは座席の位置や階などによって
分けられていて価格もカテゴリーによって異なるのがふつう。
劇場によってカテゴリーはどんなふうに分かれているの? という疑問を少しでも
解消できるように、オペラの本場ヨーロッパ40ヶ所以上の劇場・コンサートホールで
鑑賞した経験を持つ私が3つにポイントを絞ってお伝えしていきますね。
チケットのお値段事情については、こちらの記事も参照してみてください。
「ヨーロッパと日本を比較してみた。オペラ鑑賞チケットのお値段事情」
私がこれまで訪れた主な劇場・コンサートホール
ミラノ・スカラ座
パリ・オペラ座
ロイヤル・オペラハウス(ロンドン)
ウィーン国立歌劇場
ウィーン楽友協会
ザルツブルク祝祭劇場
バイロイト祝祭劇場
バイエルン国立歌劇場(ミュンヘン)
ベルリン国立歌劇場
ドレスデン国立歌劇場(ゼンパー・オパー)
フェニーチェ歌劇場(ヴェネツィア) など その他はこちらで紹介
ヨーロッパのオペラ鑑賞チケットの座席カテゴリーを知るヒント
S席、A席といったカテゴリー分けはヨーロッパではほとんど見かけない
日本では、オペラに限らず、クラシックコンサート全般・ミュージカルや演劇のジャンル
の座席カテゴリーは、上位からS席、A席、B席…といったアルファベット表記が一般的。
他方、ヨーロッパの劇場・コンサートホールではほとんど見かけず、
一般的にはファーストカテゴリー(1st category) 、セカンドカテゴリー(2nd category)
といった序数で表わすことが多く、1stの前にPremierとか、GoldやPlusといった表記を
加えて1stよりさらに上のカテゴリーだよ、と示す場合もある。
下記はドイツを代表する歌劇場のひとつ、バイエルン国立歌劇場のシートプラン。
バイエルン国立歌劇場(ミュンヘン)
ローマ数字(I、II、III)で表記されており、上位カテゴリーから順に1stカテゴリー、
2ndカテゴリーと呼ぶ標準的なカテゴリー表示。
カテゴリーごとに色で分けられており、価格も明確に示されているのでわかり易い。
この劇場の場合、カテゴリーは8つに分かれているが、これは国によって、
劇場によってさらには公演の内容によっても様々。
つづいてはイギリス、ロンドンのロイヤル・オペラ・ハウスの場合。
ロイヤル・オペラ・ハウス(ロンドン)旧コヴェント・ガーデン
こちらは Price 1 が一番上のカテゴリーで、Price 2、Price 3となるに従い価格が
少しずつ安くなっていく。
ロイヤル・オペラ・ハウスはカテゴリーが細分化されていて、
これはバレエのシートマップの例であるが、オペラ、バレエに限らず、
公演ごとに細かく分かれている。
ただし、概ねいわゆる平土間(舞台正面の席、中央の1階席)は
上位カテゴリーで占められており、
これはロイヤル・オペラ・ハウスに限らず、他の劇場でも同様の傾向と
思ってよい。
一方、日本のS席、A席のスタイルに近いのがベルギー・ブリュッセルにあるモネ劇場。
モネ劇場(ブリュッセル)
一番上位のカテゴリーがGOLD、続いてCAT. A、B、Cと続く。
これもカテゴリー別に色分けされているので、わかり易い。
平土間席はCAT. A で示されており、Parterreと書かれているエリアを指す。
Parterreというのはモネ劇場に限らずヨーロッパでは一般的な平土間を
意味する表記で、国により、劇場によりStallsとかOrchestraといった表記が
使われることもある。
一方の、GOLD席で色分けされているエリア(クリーム色)は、いわゆる昔の王族・
貴族が座ったと言われているロイヤルボックス席のなごりで
平土間よりも上位のランク。お値段も高めに設定されている。
一風変わったカテゴリー分けも
劇場によっては、一風変わったカテゴリーで分けられているケースもある。
例えば、イタリア、ヴェネツィアにあるフェニーチェ歌劇場のシートプラン。
フェニーチェ歌劇場(ヴェネツィア)
平土間(Platea)がAとBに分かれており、---> Platea Settore A / B
ボックス席もcentrale と lateraleによって、さらに前方と後方で色が分かれている。
一見すると解りにくいように感じられるが、
例えるなら野球でいうところのS席ネット裏、内野指定席1塁・3塁、
外野指定席ライト・レフトといった感じに近い。
イタリアは比較的こういった独自のカテゴリー分けがされているが、
呼称をわざわざ覚える必要はなく、どの席が上位カテゴリーかは色分けから
およその見当はつく。
ではチケットはどのあたりのカテゴリーを選んで買えばいい?
予算が許すのなら、上位カテゴリーを迷わず選ぼう
上位カテゴリーというのは、視覚的にも、音響的にも、良い響きを得られるから
チケットの価格も高めに設定されている。だから、せっかく訪れた街でオペラ鑑賞の
機会を得られたのなら、そしてそう何度も訪れる機会が無い、
あるいは最初で最後かもしれない、というのなら、
迷わず上位カテゴリーを選ぶことをおすすめする。
平土間席の、それもいわゆる「かぶりつき」だとお目当ての歌手であったり、
指揮者や演奏家などが間近に寄ってきて、それはそれで強烈なインパクトもあるし、
ファンにとっては堪らない臨場感を味わえる一方で、
劇場によっては舞台よりかなり低い位置に座席が位置している場合もあるので、
演奏中ずっと上を見上げつづけなければならず、長時間のオペラだと首が痛くなることも
ある点は要注意。
音響的には、平土間席ならば劇場によっても異なるが5〜10列目前後の中央寄り。
あるいは、ロイヤルボックス席含むバルコニー席(日本でいう2階席より上の席)の
中央寄りの最前列がベスト。
下位カテゴリーの楽しみ方も色々。ただし、視覚面では注意が必要
下位カテゴリーの楽しみ方といえば、比較的リーズナブルな価格で
気軽に鑑賞できる点。
立ち見席とまではいかずとも、バルコニーやギャラリー席の後方座席ともなれば、
カジュアルな格好で鑑賞している人も少なくないし、現地の学生なども聴きに
来ていたり、ボックス席などでお互い顔見知りだったりすると、小声で感想を
囁きながら鑑賞している人達もいる。
ただ、安い席で注意したいのが、とにかく舞台が見えにくい、もしくは、
全く見えない席も存在する、ということ。
伝統的な劇場は上の写真のように、ボックス席の2列目、3列目にほとんど段差がない
劇場も少なくなく、前方に人が座らずとも、舞台も歌手も全く見ることができず、
聴こえてくるのは音だけ。
1時間半くらいのコンサートならまだ耐えられるけれど、平均的なオペラの演奏時間と
なれば4時間近くに及ぶため、敢えて音楽だけに集中するとか、
BGMのように聴き流せればそれで十分、といったようなことでなければ
相当にハードで苦痛な体験になる、ので要注意。
モネ劇場(ブリュッセル)
下位カテゴリー、CAT.FやG(ピンクや紫)だと殆ど舞台は見えません。
番号の3や4の近くに数席見える、CAT.E(水色)などは、目の前に柱があって
視界が妨げられるため。
その分、すぐ隣のCAT.Cとは値段も分けて設定される。
ロイヤル・オペラ・ハウス(ロンドン)
同じカテゴリー11(ピンク)でも、Amphitheatre レベル(ギャラリー席)の最前列なら
まだかろうじて舞台を覗き込むことができる一方で、Stall Circleのカテゴリー11
(側面の3列目あたり)になると、舞台は全くといってよいほど見ることができない。
こちらも上のモネ劇場と同じく、最上位カテゴリー(Price1)が並んでいる座席列に
Price5(青色)Price8(黄色)が数カ所見受けられるのは、視界が妨げられているのが
その理由。
フェニーチェ歌劇場(ヴェネツィア)
フェニーチェ歌劇場の一番下のカテゴリー(濃いグレー)も、ボックス席の2列目
となるとまず舞台は見えない。
薄いグリーン、薄いブルーもボックス席の2列目で、上記グレーの席に比べると
カテゴリーは上になるが、1列目に人が座ると座ったままでは舞台は半分くらいしか
見えない。なので、ボックス席を選ぶときには、「2列目は、立って見ることを前提」
に考えておいたほうが無難。疲れますけどね。
意外な落とし穴に注意!?
いうまでもなく、こうしたカテゴリー分けは劇場によって様々なので、
ひとくくりに説明するのはなかなか難しいものの、
たいていの劇場はインターネットで検索すればシートプランが出てくるので、
そこで事前に全体を把握しておいてから、チケットを買うことをおすすめする。
また、そもそもシートプランが無い、というかインターネットで検索しても全くといって
よいほど見つからない、という劇場もまれに存在する。
(例えば、パリのシャンゼリゼ劇場などは、チケット購入画面でも全容が掴めず、
現地のチケット売り場に行ってはじめてモニター画面で見せてもらって初めて
全容がわかった劇場のひとつ。劇場ミステリアスのひとつかもしれない)
比較的大きな劇場(バイエルン歌劇場)の例をみるとわかるように、
平土間席の前方中央寄りのエリアは上位カテゴリーで、
後方になると段階的に値段も安くなっていく、というのが一般的だが、
必ずしもすべての劇場がそうとは限らない。
ミラノ・スカラ座などは1列目から最終列(23列目)のすべて、しかも左右の
端から端まで、すべて最上位カテゴリーと謳っている場合もあるので、
最上位カテゴリーだからといっても、実際にはかなり大雑把に分けられている
劇場も時々あるので、覚えておいたほうが良いかも。
まとめ
今回は劇場のシートマップもふんだんにご紹介しながらボリュームたっぷりに
お伝えしましたが、いかがだったでしょうか?
これは個人的な意見であるということを前置きしつつ、
アドバイスをさせていただくのなら、現地に住んでいるとか、駐在しているとか、
年に何度も海外旅行しているといったような場合でなければ、
できるだけ上位カテゴリーの座席のチケットを買って鑑賞したほうが、
やはり良いんじゃないかと思います。
音楽に集中できるし、何より歌劇場の良い席というのは、ほんとうに素晴らしい
音が天井から降ってくるような感覚を得られますから。
ぜひ、ぜひ、素敵なオペラ鑑賞を体験してみてほしいと思います。