オペラ鑑賞の次なるハードルは、「価格の高さ」ではないでしょうか?
ヨーロッパのオペラ鑑賞チケットは、日本より安い。と思っている方も少なく
ないと思いますが、実は、日本と変わらないほど高いオペラ鑑賞チケットも存在
します。
オペラの本場、ヨーロッパにある40ヶ所以上の劇場・コンサートホールで鑑賞した
経験から解説します♪
私がこれまで訪れた主な劇場・コンサートホール
ミラノ・スカラ座
パリ・オペラ座
ロイヤル・オペラハウス(ロンドン)
ウィーン国立歌劇場
ウィーン楽友協会
ザルツブルク祝祭劇場
バイロイト祝祭劇場
バイエルン国立歌劇場(ミュンヘン)
ベルリン国立歌劇場
ドレスデン国立歌劇場(ゼンパー・オパー)
フェニーチェ歌劇場(ヴェネツィア) など その他はこちらで紹介
ヨーロッパのチケット代の相場
とにかくひと言では言い表せないくらい、複雑な歴史が絡みあうなかで
芸術文化が育ってきたヨーロッパ。
オペラはイタリアで生まれたけれども、長い年月をかけて現在では
ヨーロッパのほぼすべての国にオペラを上演する劇場があります。
当然、お値段事情もお国によっても様々、なのですが、
ざっくりとヨーロッパのオペラ鑑賞チケット事情を掴んでもらえるような
ところから説明していきたいと思います。
価格幅の広いドイツ
ドイツには、バイエルン国立歌劇場、ドレスデン国立歌劇場、ベルリン国立歌劇場、
さらに、バイロイト祝祭劇場、ハンブルクやフランクフルト、ニュルンベルクなどに
劇場がありますが、オペラのチケットの価格幅は意外に広い。
つまり、「高い」チケットとなるとヨーロッパでも高いほうに入るのですが、
その一方で「安い」チケットも意外に多いのが特徴。
例えば、ミュンヘンにあるバイエルン国立歌劇場などは、ドイツではトップクラス。
いわゆるスターテノール歌手や、指揮者も巨匠クラスが出演するなど、
とことん目を引く公演を打ち出してきます。
そのチケットのお値段といえば、30,000円後半から40,000円台前半の額面で
売られていて(額面については、後ほど詳しく説明しますね)
人気が出るだろうと思われる公演は高めに設定し、そうではない公演は
ほどほどに設定しているようです。
ほどほどといえばいくらぐらい?と疑問に思われるかもしれませんが、
中には、20,000円台もありまして、そういった公演は地場の歌手が中心で、
スター歌手はでません。
まさに「内容」によってメリハリを効かせている数少ない劇場の一つです。
一方、ベルリン国立歌劇場の場合、バイエルンとは全く異なり、スター歌手が出る場合
でも、せいぜい15,000円〜20,000円程度で収まることがほとんどです。
ベルリンには東西2つに分かれていた時代もあり、オペラを上演する劇場も東西に分かれ
ていました。旧西側のベルリン・ドイツ・オペラなども、比較的リーズナブルな価格帯で
鑑賞することができます。
荘厳な雰囲気が漂うドレスデン歌劇場などは、ミュンヘンとベルリンのちょうど間
くらいでしょうか。ドレスデン歌劇場などでも、スター歌手が出ることも少なく
ありませんが、公演によっては18,000円前後。高いものでも25,000〜30,000円程度。
こちらも劇場の風格と安易に比較はできませんが、リーズナブルな価格帯と言えます。
安さでいうなら、チェコやハンガリー。ドイツやフランスでも大都市でなければ安い。
歌劇場としての佇まい、歴史においては、申し分のないチェコやハンガリーの歌劇場。
オペラ鑑賞チケットも安く手に入ります。
プラハ国立オペラ座やハンガリー国立歌劇場などは、一番高いカテゴリーでも
10,000円もしません。
こうした歌劇場にはスター歌手などの出演はほとんど無く、地場で活躍する歌手が中心。
まさにその土地・文化に根ざした劇場と言えます。
またドイツやフランスなども大都市の歌劇場でなければ
一番高いカテゴリーで13,000円程度。
ドイツならば、ニュルンベルクやケルン、ライプツィヒ。フランスなら、
リヨンやアヴィニョン、リールなどでしょうか。
とはいえ、稀に超有名な指揮者やゲスト歌手が登場する場合もあるので、
もし運良くそんな公演に出逢えたらラッキーですね。
40,000円を超える、オペラ鑑賞チケットとは・・・?
いわゆる名門歌劇場と呼ばれる、ロンドンのロイヤル・オペラ、ウィーンの国立歌劇場、
ミラノ・スカラ座、それからパリ・オペラ座などは、一番高いカテゴリーであっても、
通常のシーズン公演であれば25,000円〜40,000円弱に収まる場合が多いのですが、
(これらも額面で手に入れられる場合)
されど、ヨーロッパにも高額なオペラ鑑賞チケットが少なからずあって、例えば、
ドイツのバーデンバーデン祝祭劇場で開催されるイースター音楽祭や、
夏のザルツブルク音楽祭のオペラ公演などは40,000円台超え、60,000円近くする
公演もあります。
ただこれらの理由も明確で、それぞれスター歌手が出ることが多いし、
オーケストラもそれぞれベルリン・フィル、ウィーン・フィルがピットに入るので、
いわば最高級クラスが揃った公演だから、と理解すれば納得もできるでしょう。
日本のオペラ鑑賞チケット代の相場
ところで、日本のオペラ鑑賞チケットについても少し触れておきましょう。
いずれも、出演者やプロダクションによって当然変わりますが、
一番高いカテゴリーの場合、こんな具合になります。
- 新国立劇場 22,000円〜33,000円前後
- 東京二期会 12,000〜18,000円前後
- 藤原歌劇団 12,000〜15,000円前後
(いずれも会員価格やシーズンチケットではなく、単発で購入する場合)
一方で、いわゆる海外オペラの日本引っ越し公演(ミラノ・スカラ座や、
ウィーン国立歌劇場、バイエルン国立歌劇場、英ロイヤル・オペラなど)の
チケットは比べ物にならないほど高額になります。
高いには、もちろん理由があって、引っ越し公演自体が様々なコストがかかるから。
日本における滞在中のオーケストラ、合唱団、歌手たちの宿泊費、
リハーサルを行うための運営費などが必要になります。
- ミラノ・スカラ座来日公演 (2020年=コロナにより中止)20,000〜69,000円
- 英ロイヤル・オペラ来日公演(2019年) 16,000〜59,000円
- バイエルン国立歌劇場来日公演 (2017年)17,000〜65,000円
- フランス・リヨン歌劇場(2014年) 13,000〜39,000円
- ボローニャ歌劇場 (2019年) 14,000〜34,000円
- パレルモ・マッシモ劇場(2022年予定) 14,000〜39,000円
こちらも当然のごとく、最高峰クラスの歌劇場の引っ越し公演となれば、
歌手や指揮者も選りすぐりがやってきますので、当然お高くなる、
という仕組みになっています。
いわゆる額面って何?
額面、とは 文字どおり 「チケットの券面に表示されている価格」のこと。
券面と呼ぶこともあります。
通常は、額面で販売され、その金額(対価)を支払うことで、チケットを購入することが
できますが、ヨーロッパそれも一部の国や地域では、その「額面」で購入することが
できる権利を持つ「サブスクリプション」「会員制」というものが敷かれていることが
少なくありません。一般客がインターネットで買おうとするときには、完売になっている
なんてこともザラにあります。
もともとは貴族の文化であったオペラですので、こういった会員制に支えられている
という側面から言えることは、文化を支えていくパトロンの伝統であるとも言えます。
会員であることが前提となり、額面でチケットを購入できる権利を有する。
そのチケットが人気が沸騰する公演であった場合、そこに転売というビジネスが
(一方で)成り立つ。
・・・ ということになります。
日本のように、明らかに転売は違法、という国もありますが、
ヨーロッパに関しては、意外かもしれませんが、まだまだ「額面」だけで売買される
国は少なく、ブラックマーケットと呼ばれる「額面」の範疇外で売買される世界が
色濃く残っています。
売り手と買い手がいるからこそ成り立つこの世界。
正攻法で「額面」で買えないチケットもまだまだありますから、そこは、
手に入れるノウハウを持っているコンタクト先を見つけることで、
得られる最高峰のオペラの機会に出逢える可能性があるかも!?しれません。